第4次産業革命が人材教育・人材開発を変える

エドテック企業であるD2L社が、企業の部門や職種によって必要とされる教育や研修の現状とこれからに関する調査を実施してその結果を分析、“The Future of Work and Learning” 及び “The Future of Skills in the Fourth Industrial Revolution”レポートを発表した。第4次産業革命は職場をどのように変えるか、教育機関や企業における教育や研修はどのように対応すべきかを、予測・提言する二つのレポートをまとめていく。

特集
D2L Future of Work and Learning

社会の変化―第4次産業革命

デジタル革命とも称される第3次産業革命は、電子機器やIT技術の進歩により、私たちの生活を大きく変容させた。かつて注目を集めたデジタル技術は、もはや当たり前のものとして生活に溶け込んでいる。一方で、昨今、ナノテクノロジー、AI、ロボット技術、3D印刷などの新しいテクノロジーが目覚ましい成長を遂げており、第4次産業革命の到来と言われている。第4次産業革命は、私たちの常識を根底から覆すテクノロジーにより、国際的に大きな変化をもたらすと予想されている。そのインパクトを受けない業界や分野はないと考えられ、私たちの働き方も大きく変わろうとしている。

急速に変化する職業環境において普遍的に役立つスキルとして、クリティカルシンキング、創造性、適応性、感情的知性、グローバルコンピテンシーであるとレポートされている。とりわけ、感情的知性(EQ)は、重要性が認識されており、協調、コミュニケーション、共感といった能力は、優れた労働者となるために必要な性格特性と認識されている。

デンマークでは、国家レベルでスキル分析システムを導入している。複雑な労働市場データと、国内の850を超える職業で必要とされるスキルとを組み合わせて分析することで、スキルに関わる将来的な予測、雇用主調査などに役立てることができる。こうした運用は、雇用主、政府、その他の関係者の協力により行われており、同システムは、関係者への情報発信にも役立っている。

企業における人材教育への影響

社会の大きな変化に伴い、これまで社員やスタッフに必須とされてきたスキルセットが不要となり、新たなスキルの習得を求められる。すなわち企業における教育や研修のニーズが増大すると推測される。しかし、一部の教育機関などが対応を始めているというものの、現在の企業教育や研修は、こうした社会のニーズの変化に対応できていない。高校卒業後の大学や専門学校などへの進学は学費が高い上に、労働市場のニーズと教育内容の不一致も指摘されており、人材教育・開発において、解決すべき問題が多い。また、この問題は企業や個人による個別の対策だけではなく、学校教育や教育行政も含めたて社会全体での取り組みが必要とされている。

カナダのeコマース企業Shopifyは、カールトン大学、ヨーク大学と連携し、ソフトウェア開発者向けの教育プログラム「Dev Degree」を設けている。このプログラムでは、教室での学習と実務体験を組み合わせ、学問的知識と現場におけるスキルの融合をはかっている。学際的な観点を重視し、ソフトウェアエンジニアリング、企業家精神、普遍的に役立つ職業人としてのスキルの開発を、一つのプログラムに盛り込んでいる。学習の継続率が近郊の他大学と比べて高く、女性、マイノリティを含む多様な学生を受け入れるなど、注目されている。

働く側のニーズ

変化し続ける労働市場のニーズに対応するために、社員やスタッフは、場所と時間に縛られずに学ぶことができる個別教育プログラムを必要としている。学習者個人個人を中心に考えた、働きながら学習しやすいプログラムが必要となる。こうしたプログラムとしては、エドテックが可能にしている、コンピテンス基盤型教育、ブレンディッドラーニング、オンライン教育などの形式が効果を認められている。

アメリカのKrempl Communications Internationalは、世界の企業に向けて、役員レベルのコミュニケーション・プレゼンス研修を提供している。伝統的な対面型の研修に代えて、学習管理システム(LMS)と動画ベースのシステムを用いて、時間、場所の制限無く学習できる環境を提供している。グローバルコンピテンシーなどの、普遍的に役立つスキルに焦点を当てた教育を展開している。

教育プログラムを考える

大学や専門学校などにおいて、複数分野のスキルセットを組み合わせた「ハイブリッド型」のプログラムを設計することが、複雑化する労働市場のニーズに適応する有効な方法である。いくつかの業界でアピールできるスキルセットを確実に習得していることは、企業が求める要件の一つである。また、細分化した教育内容を組み合わせて実施される「積み重ね型」のプログラムは、特定の領域をターゲットとした素早いスキルアップや、不足したスキルの再学習にも適している。また、キャリア教育においては、こうした労働市場の変化についてのアドバイスやカウンセリングが強く求められる。

ビジネス技術管理(BTM)の学位は、情報通信技術(ICT)課程の卒業生がICT部門の実務に必要なビジネススキルを習得していないことを鑑みて、2009年に導入された。BTMでは、ソフトスキルとしてのビジネス知識と、現場で必要となるICTの知識の両方を教育することを目標としている。カリキュラムは、産業界、高等教育機関、企業団体(カナダ情報技術協会(ITAC)など)の協力によって開発され、実際の労働市場に即した内容になっている。BTMのコースは現在カナダの19の高等教育機関で展開されており、応募者数も毎年およそ20%ずつ増加している。BTMのような学際領域の学位と取り入れることで、高等教育機関は、変化する労働市場へ適応することが可能となる。

企業・業界との協力

教育機関が教育プログラムを設計、実施する際には、それぞれの業界のプロの意見を聞くこととが重要である。教える知識やスキルが、労働市場のニーズと合致していることを確認する必要がある。また、企業は、教育機関とプログラムにおいて繋がりを持つことによって、社員研修を教育機関に委ねるという選択肢も考えられ、双方にメリットがある。

アメリカのノースカロライナ州では、バイオテクノロジー産業が発展を見せているが、同分野で十分なスキルを持つ労働者は不足している。こうした状況を受け、業界団体と高等教育関係者は、認定プログラム「BioWorks」を設置した。「BioWorks」はコミュニティカレッジで提供され、カリキュラムは、業界の動向を踏まえた最新のものとなっている。同プログラムは、中等後教育を受けていない者にも門戸を開いており、縮小しつつある製造業部門の労働力を、高給が見込まれるバイオテクノロジー産業向けに再教育、移行させる狙いがある。2017年の時点で、ノースカロライナ州のコミュニティカレッジ6校がこのプログラムを導入している。

教育行政の役割

教育行政においては、学部や学科、専攻などの設置、カリキュラム開発などにおける新しい動きを妨げる政策や規制を緩和する、撤廃するなどを検討すべきである。そして、実施される新しい教育プログラムの有効性や妥当性については、学習者の成果に注目した評価を行い、限られた教育資源を何に投入すべきか、労働市場のニーズや動向を情報として、定期的に検討しなければならない。

シンクレアコミュニティカレッジは、コンピューター情報システムの教育課程において、コンピテンスベース教育(CBE)を取り入れている。CBEにおいては、すでに一定のITスキルを保有する学生は、短期間で課程を終えることができる。カレッジによれば、CBEの学生は通常の学生に比べ、約2倍の速さで初めの教育プログラムを終えることができたという。CBEの学生は平均4学期で課程を終えることができ、通常の学生より35%速くなっている。また、CBEの学生においては、通常の学生の2倍の卒業率を達成したと報告されている。

学び続けられる社会の実現

変容する労働市場のニーズに対応する、フレクシブルな教育プログラムの開発し普及させるには、社会人となっても常に働きながら学べる社会環境を整備しなければならない。、企業や業界が求める教育プログラムにインセンティブを与えていくこと、高等教育を受けることを妨げる要因を排除することも考えていくべきであろう。働きながらキャリアアップや新しいキャリアのために十分な教育が受けられることが、第4次産業革命の急激な変化の中でも、スキル不足、スキルギャップによる就職できない、失業するといった問題を食い止めることができる。

オーストラリアのニューサウスウェールズ州は、積み重ね型の教育プログラムを採り入れている。これにより学生は、自身が必要とするスキルを効率良く学習することができる。これに似た教育プログラムとしては、MITの「MicroMasters」が挙げられる。修士課程相当の教育が手軽に受けられる同プログラムでは、学生はオンラインで単位の取得に取り組み、さらにスキルの習得を積み重ねて、実際の修正号の取得を目指すこともできる。

【レポートサイト】The Future of Work and Learning The Fourth Industrial Revolution is here, and it is changing everything.

 



 

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