第10回 学校・教育 総合展(EDIX)取材報告

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No.1 キーワードで巡る会場ブース展示

2019年6月19日(水)~21日(金)に東京ビッグサイトで開催された、学校・教育関係者対象の “第10回 学校・教育 総合展(EDIX)”(主催:リード エグジビション ジャパン株式会社)を取材。第10回 教育ITソリューション EXPOと第2回 学校施設・サービスEXPOの2展構成であり、コンパクトな会場は、教育現場のハードとソフトとを考えなら、両展を行ったり来たりできる回りやすいレイアウトであった。

会場では、最近の教育・研修ニュースで目にすることの多い、ICT、アクティブラーニング、プログラミング、セキュリティ、協同学習、個人指導、デジタル教材、遠隔授業、働き方改革などといったキーワードが、製品やサービスとして展開されていた。

新しい教育には新しいハードを

学校向けには、協同学習が実施しやすい教室、画像や映像などの利用がスムーズになる視聴覚設備、講義やプレゼンの音声が聴きやすい音響システムなどである。高さを変えられる椅子、グループで集まりやすい机、タブレットやノートPCを使いやすい設備など、ハード面を変える必要性をアピールする展示を、株式会社イトーキ株式会社オカムラ株式会社ナリカなどが見せていた。

多人数を対象に生徒がプレゼンをする、教師がその評を行うなど、マイク・スピーカーで拡声するといった場面も多いが、単純に大きくなった声は聞きづらい。そのような声に対して驚く不快になるといった児童もあり、TOA株式会社の “教室内拡声システム” は、聴覚の違いを考えたバリアフリー製品とも考えられる。

また、実際に体感することもできた岸工業株式会社の遮光・遮熱対策製品は、ハードの面から考える熱中症対策の有効性を示していた。

働き方改革を具体化する

教育現場の働き方改革では、「いつ、誰が、何をしているか、そこにはムリやムダはないか」を、職種を越えて見直すことも必要となる。株式会社アルファシステムズのブースでは、そうした見直しにつながるサービスを展開していた。
PCやタブレットなどを備品として購入し、できれば一人一台、授業や自主学習に活用できる環境が望ましいが、実現すると、そこには機器の日常的なメンテナンスという業務が発生する。PC教室のデスクトップのデザインを勝手に変えてしまう、アイコンが行方不明、個人ファイルが残っていくなど、いつ、誰がそれを元の状態に戻すのか、授業後一台一台チェックしている現場もあるほどだ。

株式会社アルファシステムズの、マルチOS環境で利用可能な授業支援ソフトウェア “V-Class” は、教師PC画面の転送機能、生徒PCのロック機能などがあり、教師用画面のメニューもわかりやすく、PCを使った講義・実習どちらにも使ってみたいシステムだ。さらに、同社の “PCメンテナンスの手間を削減! 環境復元システム V-Recover” は、これまでは複数のソフトを使って行っていた業務をオールインワンで可能にしたシステムである。ファイルを残すか破棄するか、ユーザーによる変更を元に戻す、アップデートするなどが、PCのリブートで可能になった。授業は各科目の教員、PC教室メンテナンスはPC担当教員や事務局スタッフなど、これまで分業であったり、さらに最終チェックを誰がするかなど面倒だった管理も、二つのシステムを使うことで、分担や担当を再考し大きく時間や手間を削減できるようだ。

パーソナライズをサポート

個別指導、個別化、学習のパーソナライズなどのキーワードで表現されている、児童や生徒一人一人の進度や理解に合わせた教育をサポートする製品やサービスも増えてきている。オンライン教育またeラーニングのシステムを使った個人学習サポートで、アメリカでは、公立の小中学校段階で、教員不足を補うために利用され、バーチャルティーチャーと表現されることもある。学校だけではなく、学習塾や予備校、家庭でも利用できるであろう。

有限会社ソリューションゲート株式会社エデュゲートの “ロボット先生の時代がやってくる!” は、学習プリントをはさんで、マスコットのようなおしゃべりロボット(協力:ユニロボット株式会社)が問題を解説しするデモを見せた。ロボットと受講者の1対1対応で、今回は小学生を対象とする個別指導塾での使用を想定して、1講義15分のデモが行われていたが、幼児から高齢者まで様々な使用の場が考えられている。ロボットは児童の名前を呼び、児童がロボットに「できた」というと、次に進んでいく。インタラクティブな反応を入れながら、問題を解説していく。もちろん、受講者のログは蓄積され、その分析が人間の先生による指導に活用されていく。

教材のプロとシステムのプロがコラボレーションしたというロボット先生サービスは、教える内容の分量、話し方や間のとり方、プリント教材なども適切で、2020年開始予定で、今年度は実際に個別指導塾で内容を検証していくという結果が待たれる。

 



 

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No.2 セミナー報告「プログラミング教育で未来に役立つ力を~横浜市などでの実践を通じて~」

(株式会社ディー・エヌ・エー代表取締役会長南場智子氏)

プログラミングのカリキュラムや教材、授業事例について、この2年ほど多くのニュースやプレスリリースが発信されている。今回のセミナーは、プログラミング教育の目標を、アプリやゲームを作ることが児童にとってあたりまえのこととなり、プログラミング知識によって創造力を豊かにして、その楽しさが学ぶ意欲につながるという3段階に具体化している。

そのために「子どもの『学びやすさ』先生方の『教えやすさ』にこだわって」、株式会社ディー・エヌ・エーはプログラミングゼミを開発、指導案や教材となるコンテンツを公開している。

商店街と留学生をつなぐ
セミナーでは、横浜市立大岡小学校6年生を対象に2017年に実施した、公教育における同社のプログラミング教育活動の報告が、中心となっていた。企業、小学校、商店街(横浜弘明寺商店街)、横浜市という4者の協力による活動で、内容は「総合的な学習の時間」を使って、「商店街と留学生の懸け橋」というテーマで、商店街を訪れる外国人を対象としたオリジナルアニメ制作である。

社会とつながるプログラミング
児童のグループ学習の様子が、アイデア出し、プレゼンに向けての準備、商店街の方々との連絡文などによって、紹介されていった。真剣に取り組む児童たちは、大人を驚かせ、同じように真剣な対応を引き出していく。最終的には、児童が考えプログラムを組み完成させたアニメーションが、商店街のサイトにアップロードされている。プログラミング教育によって、教室から社会への「懸け橋」が作られたと言える内容であり、達成感を与える授業となっている。

新しい教育への協力体制
この実践活動報告を通して、小学校へのプログラミング教育導入において、以下の2点が必要であることを強く感じた。まず、Wi-Fi整備、PCやタブレットなど小学校のICT環境ハード面の充実である。特集のNo.1で紹介した、机や椅子、視聴覚機器などが自由に使える教室が一室あるだけでも、体験はより強いものとなるだろう。教育内容の質を高めるには、小学校の現場でプログラミング教育に携わる教員育成と同時に、専門知識や経験を持つ講師やアシスタントによるサポートも必要であり、企業や大学・専門学校などと小学校との協力体制を築くことが不可欠と考える。

これを可能にするためには、紹介事例のように、企業、学校、地域社会、地域行政の協力が、プログラミング教育という新しい教育を成功させる要因となっていくであろう。

関連サイト:プログラミングゼミ 遊べる、作れる、学びになる
 



 

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No.3 セミナー報告「問題児を求む。新しい高校。Loohcsの取り組み ~これからの子どもたちの学びとは~」

(株)リバースプロジェクト代表 伊勢谷友介氏/Loohcs高等学院校長 笠井成樹氏

自律的な学習、アクティブ・ラーニング、協働学習などの言葉は、「どのように」「何をテーマにして」「どのような機器やアプリを使って」といったハウツーで語られることが少なくない。教育の理想や目的は何か、そのためになぜそうした学習形態が必要なのかが、Loohcs高等学院での実践を通して説明され、同時に受講者に「感じさせた」セミナーである。

何個の地球が必要?
なぜ、高校を立ち上げたのか。伊勢谷氏は、エコロジカルフットプリントの考え方を、もし世界の人口がすべて米国と同じ生活をしたら、地球は5個、日本とでは2.8個、中国とでは2.2個などの数字で紹介して、世界は「地球を支えられる限界を超えている」という意識がスタートだと語る。高校では、地球1個分で収まる「生き方」、すなわち「生きる力」を考え実践できる人間を目指すという。

リベラル・アーツとアクティブ・ラーニング
そのためには、「『なぜ学ぶか』を学ぶ」教科である「リベラル・アーツ」がカリキュラムに入っている。「生きる力」を考えていくためには、正解を求めるのではなく課題をみつけることから教育は始まる。そして「課題を認識」→「解決方法を考え、共有する」→「実行する」→「結果を受け新たな課題を認識して」、また最初の「課題を認識」に戻るというプロセスで学んでいく。アクティブ・ラーニングは、能動的に学ぶことであり、また、他者を大切にして他者からの気づきをによって互いに成長することを可能にする学習方法であることが、Loohcs高等学院の授業や生徒の活動から語られた。

クリエイティブって何?
そして、セミナー受講者にもアクティブ・ラーニングの機会が与えられた。「どうして、クリエイティブ!?」という問いに対して、マルセル・デュシャン「泉」(1917年)、美濃地方で主に生産されていた織部焼ジョン・ケージが作曲した無音の「4分33秒」(1952年)が提示され、受講者同士でその問いについて考えた。自分とは全く異なる感想や意見に驚き、当然、正解を求めるものではない。

「クリエイティブの質」とは「問いかけの質」であり、「人々に思考&感じさせるコミュニケーション」であるという笠井氏の言葉によって、ほんの少しではあるが、アクティブ・ラーニングの意味を実際に体感するという貴重な体験を与えてくれたセミナーである。

関連サイト:リバースプロジェクト COMPANY
      Loohcs高等学院

 



 

Pholly

No.4 ポートフォリオを考える

高大接続で話題になっているポートフォリオ(eポートフォリオ)については、目的は何か、生徒や学生・教員・職員などどの立場が主体なのか、ポートフォリオで完結させるのか、他のシステムとの統一を考えるのか、働き方改革の一環としてとらえるのかなど、導入前に明確にすべき点が多いということが、各社のブースを回る中で感じられた。

ポートフォリオ導入の目的は何か

たとえば、ハーモニープラス株式会社のブースでは、「ポートフォリオ×LMS×学修成果アセスメント」をテーマに、大学学修支援システム「学生ピタ!」のポートフォリオ機能に焦点をあてていた。学生にとって何が分かるようになるのか、教職員にとって他のシステムとどのように連携して学生指導の充実を図ることができるのか、具体的なポートフォリオ内容例と共に紹介されていた。大学入学から卒業、就職までの流れの中で、ポートフォリオの必要性を見せる展示でもあった。

アンザスインターナショナル株式会社は、学芸大学の森本康彦教授の監修を受けて開発された新しいポートフォリオシステムである「まなびシート」をブースで展開。映像で紹介される導入例はサッカーチームで、ポートフォリオ→学校ではなく、様々な学びの対象を広くとらえていることが分かる。学ぶ側も教える側も、学習を記録し振り返り次の学習に活かすという視点に立った現場が見えるポートフォリオと言えるのではないか。

弊社 “Pholly” ブースにて

弊社Mogic株式会社も日本事務器株式会社ブースにて、ポートフォリオ “Pholly” を、立ち寄ってくださった教育関係者の方々に紹介、ポートフォリオについてのご質問やご意見を伺う機会を持った。弊社の開発発想の一つは、授業を受ける生徒や学生と授業を行う教員スタッフとの間、また生徒や学生の間での、コミュニケーションをより密にすることで、リアルな授業の延長となるソリューションを提供したいということである。一回一回の授業でのレポート課題やグループワークにおける生徒や学生間での話し合いや協同作業のプロセスなど、コミュニケーションとその成果を可視化するために、“Pholly” はある。ブースで “Pholly” で何ができるかをご来場者にお話ししていると、使用場面がイメージとして浮かんでいらっしゃる様子が見え、実際に授業ご担当者であることが感じられた。ご質問やご要望を参考に、現場で「使ってみたい」というバージョンアップを今後も進めていきたいと考えている。

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