アメリカのオンライン看護教育

アメリカでは、看護教育の分野でも、大学の学位をオンラインで修得できるコースや、継続教育としてのオンラインプログラムが増えてきている。今年は、パンデミックにより、既存の通学制コースでもオンライン授業への移行も行われた。入学希望者にとってはオンラインであれば、通学は不可能な地域にある大学の評価の高い学部に入学することも可能であり、授業料、教育内容、資格、キャリア支援などを考慮して、ニーズに合った選択肢を見つけることができる。

特集
Marian

なぜオンラインコースが必要か

地域医療を守る

看護師養成課程のある大学は都市圏に位置する場合も多く、学生の居住地によっては、通学のために転居が必要となる場合がある。都会への看護学生の流出が起きれば、地域の医療機関に勤務する看護師の高年齢化が進む。例えば、ペンシルベニア州では、過疎地域において、看護師不足が発生している。スタッフが不足することで、病室でのきめ細かなケアが行き届かなくなる恐れがある。また、看護師一人一人の業務負担が増大し、労働生産性の低下、ひいては地域医療の質の低下が起きる。他の州では、看護師養成教員の不足が深刻化する事態も発生している。居住地を問わず受講しやすいオンライン教育は、幅広い層に教育の機会を提供することで、問題の解決につながる。

オンライン化の方向性

オンライン化の方向性としては、講義から臨床まで、カリキュラムの大部分をオンライン化する大学もあるが、学科の講義をオンラインで受講したのち、体験型授業で実習を受けるという、ブレンディッド教育を採用する大学が増えている。対象は、通常の看護学士課程(RN)の他に、既に看護に従事している者を対象とした課程(RN to BSN)なども用意されている。また、オンライン教育サイト “RN Best Practice” では、看護学習に役立つ、皮膚清浄、血栓塞栓症、栄養不足、呼吸器系などのトピックを、モジュール式の受講形態で学ぶことができる。すでに看護に従事している者が教育サイトを併用することで、知識の再確認、スキルアップが可能である。

Marymount

看護分野のオンライン学部・大学院

ナイチンゲール大学
準学士、学士、大学院の各レベルにおいて、オンライン/ブレンディッド教育による看護課程を有している。学士課程では、RNとRN to BSNの両方が用意されているが、いずれも、地域の医療機関と連携することで、シームレスな研修の実施が可能になっている。一般のオンライン看護課程では、学生自身が研修の手配をする必要があり、負担が大きいという。こうした地域連携型の教育を受けた看護師は、卒業後も、その地域の医療に貢献してくれるかも知れない。また、大学側は、地域連携を通してニーズを把握した上で、これに合わせて入学定員を調整することもできる。

マリアン大学
同大学のBSNプログラムでは、看護学以外の学士号保持者を対象として、オンラインでの学科教育、現場でのスキル養成、地域医療機関と連携した臨床教育を実施している。他分野から編入してきた学生でも、効率的な職能教育により、着実に看護師を目指すことができる。また、100%オンラインのRN to BSN課程も用意されている。

南イリノイ大学
エドワーズビル校において、オンラインの看護師養成教員修士課程を展開している。同プログラムを修了したのち、2年間の教育実務経験を積むと、全米看護連盟による認定教員試験を受けることができる。同大学では、試験対策の短期プログラムも用意している。また、卒業生には、教員として働く以外に、高度なスキルを必要とする急性期医療現場で活躍することも期待されている。

メリーマウント大学

教育企業のKeypath Education社と連携し、2020年、看護学の新たなオンラインコース “Marymount Online” を開設した。Keypath社が有する臨床実習施設のネットワークを活用することで、国内のあらゆる地域において看護実習を受けることができる。居住地近くで実習に参加できるため、学習者の負担も少ない。

臨床教育はオンラインで可能なのか?

看護課程において、臨床教育は、現場を意識した、非常に重要かつ緊張感の高いカリキュラムだ。昨今のコロナ下においては、臨床教育へオンラインのシミュレーションを導入する動きもある。実地さながらの緊張感を保ちながら、十分な臨床経験の機会を確保することが焦点となっている。

臨床シミュレーションと実技練習キット
バーチャル環境でのシミュレーションと、自宅でできる練習キットを組み合わせ、看護実習を行う事例がある(ナイチンゲール大学)。学生は、カリキュラムの大部分をオンラインで受講しながら、セメスター毎のスクーリングや、提携医療機関での実習にも参加する。

シミュレーションセンター
マリアン大学は、複数の部屋からなる、大規模なシミュレーションセンターを備えている。このセンターでは、産科、小児科、手術などの現場で発生する重要な場面を忠実に再現したシミュレーションに参加できる。医療現場における高いリスクと緊張感を伴う場面を、安全なバーチャル環境で体験することができる。受講者は、シミュレーションに参加したのち、教員やクラスメートと報告会を行う。現場におけるリアルタイムの対応を学びながら、クリティカルシンキングや問題解決など、実践で役立つスキルを高めることができる。

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