第23回東京国際ブックフェア取材報告(No.3 No.2 No.1)

2016年9月23日(金)~26日(日)に東京ビッグサイトで開催された、“第23回東京国際ブックフェア”会場より、電子書籍及び印刷内容の電子化について、3回にわたって掲載。

特集

No.3 電子化の方向性


ブックフェア会場全体の中で、電子書籍のコーナーは、紙本と電子書籍両方が紹介され印刷技術についての展示もあり、読むこと・書くことの歴史を最も感じさせた。印刷技術の誕生と発展は読む・書くに大きく関わってきた。現在は電子化がまた新しい方向性や広がりを与えている。ブックフェア取材をまとめる前に、書籍のこれまでとこれからについて考えるために一つの博物館と二冊の本を紹介する。総合展示で様々な印刷物を見せ印刷の歴史を紹介する◆印刷博物館◆、パーソナルコンピュータが書くことにどのような影響を与えたか、奥出直人著◆物書きがコンピュータに出会うとき◆(河出書房新社)、読むことの歴史を物語る写真集アンドレ・ケルテス著/渡辺滋人訳◆読む時間◆(株式会社創元社)である。

books

1.アプリを使って対象を拡げる

電子辞書といえばまずカシオ計算機株式会社、国内シェア首位はカシオ計算機の”エクスワード”である。
中学生・高校生対象モデルではすでに地位を確立している同社は、未就学児や小学生を対象とする学習アプリで層の拡大を狙う。今回のアプリのポイントは、母親や父親など大人がそばにいて一緒に使う仕様ではなく、幼児や児童が自分でゲームをするように学ぶことができる点だ。

最近では常に更新されているインターネット上の辞書の使用が広がっている。しかし、同社の電子辞書はインターネットで分からないとき迷ったときに、詳しい説明を提供する。
串刺し検索や縦横に横断する検索機能やジャンプ機能を使って、次々に調べていくことができる。学習アプリは年齢に合わせた電子辞書ユーザーを育てる入口となるだろう。

株式会社ReDucateは”えいぽんたん”と”きこえ~ご”はゲーミフィケーション分野で20代~40代ぐらいまでの女性ユーザーが多く、生徒・学生層への対象拡大を図る。
前者は、すべて動画による学習、学習コンテンツとしてまとまった時間ではなくスキマ時間利用を考えている。後者は英語学習に対する動機づけとしての機能がある。どちらも英語コンテンツは英語教材で株式会社アルクの教材を使用。レベルは英検3級~準1級までに対応し、学校教育の場でも教材として使いやすい仕様に変更している。

今後、英語教育は聞く・話すといった使う英語が授業内容となっていくことが予想される。このアプリを使えば、そのような授業の予復習として基本的な単語の意味学習に自分で取り組むことができる。

2.使い分けて学習効果を高める

求人応募には資格が必要な職種も増えてきている。
株式会社堀内印刷所は、印刷会社として各種資格対策本の書籍データを持ち、それを電子化・アプリ化。どちらかを選んで使うというよりも、使う時間や場所に合わせて併用することでさらなる学習効果が生まれる。

自宅でメモをとったりまとめたりしながらじっくり学習するときには紙本、通勤や通学のスキマ時間にはその予復習にアプリを使う。アプリでは誤答問題やブックマークした難問のみをやり直すなど問題の選択も簡単だ。
紙本とアプリのセットは検定や資格試験対策に有効な学習方法である。

幼児や児童対象の創造力や思考力を育てる教育で実績を持つ花まる学習会(株式会社こうゆう)も紙本とアプリ併用効果を説く。

紙の教材とアプリそれぞれの特性を活かし、アプリでしかできないことを提供するという考え方だ。空間認識力を育てる課題は、頭の中で何度も試し考えてみなければならず、紙の教材よりもむしろむずかしく感じるが、紙でもアプリでも実際に対象となる幼児や児童で使用経験を重ね商品化している。
定量データを得ることが困難な領域であるが、花まる学習会としての実績から定性データで効果を実証してきている。中学受験対策学習に入る前に使いたいアプリだ。

3.電子化から発想する

紙の書籍単体ではできない新しい便利なことを、電子化によって付加することができる。CD付きの英単語本は多いが、書籍とCDを聞くためのプレイヤーと両方を使う必要があるが、アプリであればタブレットやスマホなど一つのツールで完結する。

フロンティアマーケット株式会社の”耳勉”は、宅建受験学習用無償アプリであり2年前にiアプリとして開発、アンドロイドアプリを今年から発売している。ノイズがあることで疲れていても脳は集中して聞こうとするため、利用者は学習後の記憶効果に驚くと説明を聞いた。今後も業務に必要な資格試験対策として医療、福祉などの教材化が考えられている。

株式会社デザインMプラス/ミクロマクロリンク株式会社は”Music Meta Library(音楽俯瞰図書館、通称ミューリブ)”は楽譜と音楽を”E譜”でシンクロさせる。これまでもPCで電子楽譜を作成するアプリはもちろんあり、作成した電子楽譜を持ち歩くことができるiPadアプリもあるが、こちらはPDFの楽譜をデジタル化し再生可能(midi)にするサービスである。

同社サービスはFaceBookを使って、手書きも含めコメントを付加し、楽譜を共有、保存管理、印刷などに対応する。譜面台上の楽譜のように楽譜を見開きで表示するディスプレイから始まった開発だ。ジャンプ、リピートなどの再生、Youtubeとの連動もできるという。これまでにないサービスは新しい使い方につながっていくだろう。

4.電子書籍を作る

1995年に発売された文庫本100冊が一枚のCD-ROMに入っている『新潮文庫の100冊』を覚えている方も少なくないだろう。
電子書籍を読むことを普及させてきた株式会社ボイジャーは、個人出版のニーズに応えて「読む手段から作る手段の提供」として”Romancer(ロマンサー)電子出版のためのWebサービス”を始めている。複雑な手順もなくコストもかからず、個人作家が電子書籍として作品を配信できる。

無料で使用できる作品の出版・公開サービスであり、有料の制作協力サービス・販売委託サービスも準備されている。文字データもコミックや写真など画像データも容量の違いはあるものの、ワードやPDF形式のデータがあればすぐに書籍化可能という。
“Wordでビシッ!とデジタル出版 まねするだけ入門ガイド”を見ると、Wordでの執筆から書籍化までが分かりやすく、使いやすい個人出版の選択肢となりそうだ。

株式会社平河工業社は、電子書籍による立ち読みをWeb上で実現する。印刷媒体と同時にHTML5対応のWeb上で読める電子版を制作し、サンプルとして公開する。
電子化すれば音声や動画もリンクも埋め込むことができるため、インタラクティブに読むことが可能になる。見るディスプレイ画面の大きさに左右されない固定レイアウト型電子書籍は、印刷物と同じようにページを表示する。

雑誌、専門書、一般書籍などをこのような形で「立ち読み」したいというニーズは少なくない。出版社でも電子配信の雑誌の新コンテンツ一部を登録者に配信するといった使い方をしている。
またPDFファイルのカタログもこの形式であればより内容が見やすく探しやすく、同社配布資料にある「一歩上を行く操作性と楽しさ」を与える。

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No.2 出展企業ブース


今回の取材は、カシオ計算機株式会社、フロンティアマーケット株式会社、株式会社堀内印刷所、株式会社デザインMプラス/ミクロマクロリンク株式会社、株式会社ボイジャー、株式会社平河工業社、花まる学習会(株式会社こうゆう)、株式会社ReDucate(順不同)の全8社である。各ブースを回り、展示パネル、ディスプレイなどの解説を読み、担当スタッフの方の熱のこもった詳しい説明を聞き、実際に商品を体験してみた。

カシオ

 

◆カシオ計算機株式会社◆

【出展内容】
今回の展示は、タブレット型デジタル知育ツール“kids-word”と電子辞書“EX-word”(はじめての学習から安心して使える)小学生モデルを展示。

【画像説明】
展示パネルで商品を説明。“kids-word”と“EX-word”それぞれの商品対象年齢の子供たちが体験しやすいブースレイアウトになっている。

フロンティア

 
 
 
 

◆フロンティアマーケット株式会社◆

【出展内容】
日本初、ノイズを使って効率のよい暗記を促す資格試験アプリを展示。

【画像説明】
2~3のパネル及びディスプレイでは、忙しく時間がない人、暗記が苦手な人など資格試験勉強が必要な人のために開発されたノイズ学習法を紹介。
ノイズありの音声を聴くことで内容を聴きかじり、聴きとどめ、続いてノイズなしの音声を聴くことで聴き覚えることができ、学んだことを暗記することにつながると図解で説明。

堀内印刷所

 
 
 

◆株式会社堀内印刷所◆

【出展内容】
展示ディスプレイ上段では印刷物の資格試験問題集と印刷物の書籍、下段では資格試験問題集アプリと書籍の電子書籍版を展示。

【画像説明】
2~3のケアマネの資格試験アプリでは、試験までの日数が常に表示されている。問題集や用語辞典、合格体験記、関連書籍もあり、クリック一つで利用できる。4~5は印刷物の書籍と電子書籍の同じページを並べて比較して見ることで両者の相違を確認できる。

デザインM

 
 
 
 
 
 
◆株式会社デザインMプラス

/ミクロマクロリンク株式会社◆

【出展内容】
電子楽譜と専用ディスプレイを展示。

【画像説明】
2は紙の楽譜の感覚に近い見開きの電子楽譜を専用ディスプレイで見せる。3で音楽俯瞰図書館「ミューリブ」をパネルで紹介。4~5では電子楽譜の聴きたい小節をクリックするとその部分がハイライトされ、音楽が再生される。

ボイジャー

 
 
 
 
 
 
 

◆株式会社ボイジャー◆

【出展内容】
同社の書籍と電子書籍化の紹介、個人での電子書籍出版ガイドと出版物を展示。

【画像説明】
2~3では同社の書籍と販促としての立ち読み、電子書籍を紹介。4は個人の電子書籍による出版のノウハウを紹介している。5は実際に個人で作成した出版物を展示紹介している。

ヒラカワ

 
 
 
 
 
 
 
 
 
◆株式会社平河工業社◆

【出展内容】
販促としての電子書籍と写真を中心に印刷技術の比較を確認できる印刷書籍類の展示。

【画像説明】
2ではWebでサンプルを公開する販促としての電子書籍作成の紹介。3は印刷物の色の再現と修正を同じページで比較して見ることで加工前、加工後の相違を確認できる。

花まる

 
 
 

◆花まる学習会(株式会社こうゆう)◆

【出展内容】
なぞぺーシリーズでの知見を集めた“思考力教材アプリThink!Think!”をタブレットで公開。

【画像説明】
紙教材では繰り返し訓練しにくい内容をアプリ教材に展開。2~3のように複数の点の中から「ましかくをさがそう!」や不規則に並んだ風船を様々な場所から矢を放った後に「のこるふうせんはどれ?」など頭の中で徹底的に考えさせる。

reducate

 
 
 
 

◆株式会社ReDucate◆

【出展内容】
英語学習アプリ“えいぽんたん”と“きこえ~ご”を展示。

【画像説明】
Apple store教育カテゴリー内で10位以内の実績がある(9/26現在)両アプリは、出題される英単語を学習しながらキャラクターを育てていく。学習意欲を継続、促進するために、友達と一緒に学習することが可能である。
 
 
 
 
 
 
 


No.1 概況


ブックフェア2016

第23回東京国際ブックフェアは、2016年9月23日(金)~26日(日)10時~18時、東京ビッグサイトの西展示棟で開催された。

これまでに特集で紹介した教育ITソリューションEXPO(EDIX:エディックス)とは異なり、一般の来場者も会期中すべて訪れることができる見本市であり、3日間の来場者数は4万人を超える。

会場は、総合出版エリアを中心に、自然科学書フェア、人文・社会科学書フェアと専門書フェア、児童書フェアにこどもの学びフェア、こどもひろば、こども基地(遊び場)などに分かれる。ビジネス、一般、子ども、保護者など様々な対象に向けて、出展社特別セミナー、講演会、サイン会やイベントなども行われる。他の見本市では少ない乳幼児連れの来場者、学生、色々なグループなど一般の来場者も多く、地域限定本販売、洋書バーゲンセールは人気を集めていた。

今回、Qureでは電子書籍ゾーンと子どもの学びフェアにおいて電子書籍を出展しているブース、全8社を取材。スマホやタブレットで読書する、アプリを使って教材を学ぶ、自分の電子書籍を作るなど、特色あるブースが展開されていて、実際の商品を前にまた使いながら出展企業のスタッフの方の説明を聞くことができた。
印刷や出版の実績がありその延長上に電子書籍部門がある、印刷書籍での教材からデジタル教材へ広げる、電子書籍で新しい商品やサービスを手掛けるなどそれぞれ背景は異なるが、電子書籍の可能性について改めて考えさせる展示であった。

次週No.2では、取材写真や配布資料をもとに各社の商品やサービスを具体的に説明していきたい。

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